ちょっとうれしかったこと<源氏物語>

今年は『源氏物語』千年紀ですね。先日、朝日新聞を読んでいたら、「国文学者・山本さん×エッセ
イスト・大塚さん対談
」という記事がありました。それで、ここのところまた頭の中が「源氏物
語」でいっぱい。

ずーっと前...このブログを始めた頃だったか、以前私がデアゴスティーニ社の「週刊ビジュアル源
氏物語」
(全96巻)のイラストを担当していたと書いたことがあります。毎号5〜10点くらいだっ
たか...当時の風俗習慣がわかるイラストを描き続けること2年以上。2年以上というのは、某地方都
市で先行発売されていたからなんですが...。
よもや私が古典なんて!それも「源氏物語」〜!??とビックリしたものです。

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私の役割は、物語のシーンの雰囲気を伝えることではなく、資料としての役割が大きかったし、
さらに「国語便覧」みたいな堅苦しいものでもいけなかったわけです。
読者層はOLのかたを中心に考えていたのかもしれませんが、「源氏」と聞けば何でも手に取る源氏
マニアの方や、専門的な研究者まで見るのでそういう方からも『間違ってる!』などというクレー
ムがつかないよう、注意に注意を重ねて描くことも重要でした。

知識ゼロの無垢な脳味噌で描かなければいけなくて、最初それはそれは苦しかったなぁ...。インター
ネット、書籍etc.調べまくる日々でありました。描く時間より資料調べと、ありとあらゆる作家の現
代語訳、そして原文を読み較べがほとんどの日々。

結局2年以上、睡眠時間日々3時間、週2回完徹...これが基本でありました。
だって、「間違ってる」なんて言われるの、えらく残念ですし。

すっごく幸せだったのは、編集の方からいただく原稿や資料に、平安時代の生活や常識が
くっきりとわかる、他の古典...例えば「今昔物語」のような...の参考文献が山のようにあったこ
と。おかげで、「源氏」だけでなく、かなり立体的にその時代の感覚が掴めるようになりました。

他の方はどうだかわからないのですが、私自身は、資料が集まっただけでは絵が描けません。描か
なければいけない内容の3〜10倍くらいの資料を集めて、自分の中で消化し、アタマではなくて体全
体の感覚で納得いかないとできない。
(でも描いたイラストそのものをご覧になったら、え、これが?と思われてしまうかも...。)

さらには、それぞれの登場人物の目になり切ってモノを観て、その人物の感じ方で感じないとノレ
ないので描けない...。紫の上の心になったり、光源氏自身になったり、末摘花になりかわったりし
て大忙しです。(それがおもしろいんです...!)

最初、引き目鉤鼻下膨れの絵を眺めながら、「こんな人好みじゃな〜い、なりかわれな〜い」
と半ベソをかいていて、ぎこちない絵しか描けませんでしたが、読み進むにつれ光源氏の様子が掴
めてきました。
頭の中で映像がどんどん動く...こうなれば描けます。源氏物語を読む前は、いい噂を聞かなかった
光源氏ですけど....
な〜んだ、すっごい私好みのいいヤツではないか♪一体今までみんな何を読
んでおいでだったのか?(女君の立場からばかり情念・怨念過剰で読むのはどーかと思いますです。
それから、「平安時代」に過剰なまでにしっとりとした日本的情緒のイメージを持ち過ぎるのも...。
だって、千年前も今も、みんなニンゲンだもの。)

光源氏を許せないなんていう人は、「ひたすらまじめに教科書通り、間違ったことは何一つしない
で生きなさい」と言われて育ったのかなあ...?

f0063645_22594488.jpg

今昔物語などを脇に携
えて読む平安時代は、
びっくりするほど生き
生きとした人間くさい
世界。

そして「源氏物語」は
人間を微に入り細に本
当によく観察して描い
ていると思います。

何度読んでも新鮮。








さてさて。
この新聞記事の中に、
個人的に嬉しくなる部
分がありました。

←この、赤い枠で囲ったところ...。

f0063645_00944.jpg大塚さんといえば、源氏物語にまつわる活きのいいエッセ
イを何冊も書いているかた。イラストを書く資料として、
何冊か読みました。
このプロフィール欄には書いていないけれど、←こんな、
持っているだけでがっくりと肩を落としてしまうタイト
の本もあったりする。(私も持っているんですけど...。
ただしこれは、著者と女君たちを絡めて書いた真面目な
エッセー。)

当時「源氏の男はみんなサイテー」という本も読んで、な
んでよ、もっとちゃんと人間を観察してよ、オーツカさ
んっ!と、寂しく思ったのでした。

あーよかった。
そして、そうそう。私も晩年の源氏が、とりわけ好きなんですっ。人って、こういうもんなんじゃ
ないの?と思うので。


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by kadoorie-ave | 2008-10-02 00:52 | | Comments(7)
Commented by yaliusat at 2008-10-02 03:13 x
ご無沙汰しております。

香港のリポートは、そのあまりの怒涛の情報と面白さに頭がクラクラして、何をコメントすればいいのかわからず、引っ込んでおりましたが、いつも拝読しています。

『源氏物語』ですか。デアゴスティーニって、そんな物まで出していたのですね。ちょっとビックリ。(2002年て、ぼくが日本にいなかった時期ですか)

でも、そういう風に自分の得意フィールドとは思ってなかった分野でお仕事が来ると、勉強に燃えたりして、楽しいですよね。

ぼくは物を作り始める前の事前勉強として資料をひたすら読んでいる時が、一番好きです。いざ作るのにとりかかると、苦しいことが多くて。(涙)
Commented by チャイカ at 2008-10-02 15:30 x
あの節はお世話になりました。マラソンレースのような仕事だったですね……小野寺さんの探求心のすごさには圧倒されました。有職故実に関しては、私よりも詳しかったぐらいではないですかw

私も源氏のおかげで、日本語や日本文化の見方をずいぶん学ばせてもらった気がします。大変だったけど、実りの多い仕事でした。
Commented by あんみつ at 2008-10-03 00:15 x
これはびっくり!『源氏物語』、毎年のように高校生と読んでいます!デアゴスティーニのシリーズも図書室に全冊あるのですが、これまで活用したことがありませんでした。明日にでも確認して、早速授業で使います~!
大塚ひかり女史の本、私もいくつか読みましたが、うう~ん、ちょっと下世話な感じ?がいまひとつ馴染めませんでした。丸谷才一氏の小説『輝く日の宮』が源氏関連本(といってもこれは源氏をネタにした小説ですが)では面白く読みました。じ、じつは、平安朝文学が私の学生時代の専門分野だったりするのですが、調度品関係(御簾の紐とか)や衣装の細かい織りとかビジュアル的なことはよくわかってないことがいっぱい!(いいのか、そんなんで授業やって…)…小野寺さんのイラスト参考に、勉強しまーす!
Commented by kadoorie-ave at 2008-10-03 11:28
>yaliusat さま
香港のレポート、今回はきちんとした報告をするつもりで書きはじめたら情報の羅列になってしまい
勢いもついて、読んでいる方にしたらまだ呑み込んでいないのに
次の食べ物を押し込まれるような感じに違いないと、自分に呆れています。
どうしてこうなちゃうんでしょう?
デアゴスティ—ニは本当に多方面、よくそんなものを思いついたと
感心するほどバラエティーに富んだものを出していますね。
中には先行発売されたものの、全国版は出ないというものもあります。
勉強嫌いなので、守備範囲外とはいえ、平安時代のことを少しでも齧ることができてよかったです。
Commented by kadoorie-ave at 2008-10-03 11:34
>チャイカさま
ほんとーーーにその節はお世話になりました。でも、おもしろかったですねえ。
探究心も何も、あまりに無知で描けないんですもん。
源氏物語絵巻をはじめ、古典絵画は肝心のところが全部雲に隠れて省略されており
仕事の資料にはならならないんです。同様に質の良い日本画も資料にはなりません。
今昔物語をもとにした文献の資料が多かったので、
あれがあそこまで生き生きとした話だと知ることができてよかった。
結果として中国に関する知識が深まったのもおもしろいことでした。
Commented by kadoorie-ave at 2008-10-03 12:03
>あんみつさま
源氏物語の仕事をして、平安時代が「夢か現」のような時代ではなく
それはそれは人間くさい(あたり前ですが)時代だとわかったことは大きな収穫でした〜。
そして、当時の先進国、中国の文化の影響の大きさ(これもあたり前とはいえ、あまり意識してこなかった)。
時代を今にしてアメリカかぶれやヨーロッパかぶれに替えて連想するとおもしろいです。
今の日本の官僚が、書類を全部英文で書かなくていけなかったらどうかな...とか
英語力が出世の基本条件、とか、男の人でも欧米のトップモードをいかに着こなせるか
(妻や付き合っている女性のファッションもコーディネート...)
男たるものオードトワレやアロマテラピーの知識に長けていないとね、とか...。
Commented by kadoorie-ave at 2008-10-03 12:08
>あんみつさま (長くなってしまってごめんなさい)
遣唐使を廃止して以降、バリバリの舶来文化をどのように日本らしく
消化していったかを知るのもおもしろかったです。
あ、それから今より情報伝達手段が少ない分、男女もいまよりよっぽど「やるなあ..」と
舌を巻きます。う〜ん、やっぱりあの時代はいい。
後妻打(うわなりうち)に変に感心したりして。

それにしても、デアゴスティーニの『ビジュアル源氏物語』が図書館に全巻あるとは驚きです...。
描いていた頃、「こういう内容は高校生とか、おもしろがるはずだけどまさか学校は置いてくれないですよね」と
話したことがあります。
衣装ですが、十二単は今ですと13〜20kgといわれますが、当時は「小石丸」(でしたっけ?)という種類の蚕を使い、
今よりずっと細い糸を吐いたものなのでもっと繊細で薄く軽かったと聞きました。それも知らなかった...
小石丸の生地の萎装束、優雅ですねえ...。権威を見せつける今の強装束より粋だと思うなあ...。見てみたいです。
私の描いたイラストは...よく見なくていいですよぅ.....
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